少し前ですが、映画「関心領域」を観ました。
「関心領域(The Zone of Interest)」とはアウシュヴィッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために使ったナチス用語。
映画はアウシュビッツ強制収容所の所長ルドルフ・ヘスと家族の話で、収容所の壁に隔たれた美しい邸宅での優雅な生活が描かれており、まさに悪の凡庸さといったものを痛感するものでした。アウシュビッツがテーマだと聞くと、さぞかし収容所の過酷な描写が描かれているかと思われがちだが、一切描かれておらず。
終始、所長一家の裕福で平穏な日常が淡々と描かれていました。しかし、それが驚くくらい不気味。直接心が痛むような映像を流さずに、ここまでの恐ろしさを演出できる映画はこれまで観たことはありませんでした。
邸宅では押収した衣服が提供されたり、庭には焼却灰を肥料としてまき、子どもたちはユダヤ人たちのであろう金歯や銀歯をおもちゃのように遊んでいたり、効率的に運用できる焼却炉の商談に興じていたり…
しかし、この所長とその家族の無関心さ、壁の向こう側への想像力のなさを私たちは果たして糾弾できるのか。所長一家に投げかける私たちの軽蔑や憤りこそ、自分自身に突き返されているような後ろめたさを抱かざるを得ない。そうした厳しいメッセージを突き返してくる映画でした。
イスラエルによるガザ地区の侵攻に未だに和平の兆しが見えていません。途上国支援NGOに努めている学生時代からの友人からもパレスチナの惨憺たる現状を聞き、日々本当に胸が詰まる思いです。
とにかくこれ以上、無実の人々や子どもを殺さないで欲しい、一刻も早く和平が訪れて欲しいと願っています。
無関心ではあってならない。映画「関心領域」で改めて気づかされます。
ユダヤ人に対する虐殺行為が主題の映画を観て、今ユダヤ人国家がしている虐殺行為に思いがいくという皮肉。
少しでもこのことに思い出す人がいることを願って、私の事務所の窓には自分の市政報告などの他にガザに対する思いも掲示しています。
かつて世界で最も自由な福祉国家から世界で最も独裁的だった国家が誕生し、虐殺されてきた人たちが今、他の人たちを虐殺する。恐ろしいまでの皮肉に、世界を理解することの難しさを痛感します。
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